最新レポート  
2008年1月
タンザニア産地レポート

キリマンジャロ山

 今回の出張はキリマンジャロコーヒーの産地訪問。関空発のカタール航空に乗り、カタールの首都ドーハの空港で一晩過ごし、翌朝タンザニアの首都ダルエスサラームへ到着。長旅でふらふらなのに賄賂目当ての通関係官にスーツケースの中のサンプルが見つかり、足止めを食らう。最初の係官の女性は問題ないとして通そうとするが、いかにも「俺はワルだぜ」と顔に書いてあるような様相の大男が自分のチャネルに呼びつけ、だらだらと問題を告げる。前に並んでいた欧米人の旅行者も痺れを切らして数ドルを渡していた。ここで賄賂を巻き上げられるのも癪だし偶々持ち合わせていたタンザニアの農水省の電話番号一覧を示し、担当者に電話しろと迫ってみたら、意外にあっさりとあきらめて通してくれた。使い古された手も結構使えるものだと我ながら感心。

 ダルエスサラームの旧市街はアールデコ調の建築物が朽ちながらも残っており、以前働いていたムンバイのフォート地区を髣髴させ不思議な懐かしさを感じる。地元料理の物色の為に中心部に程近いインド人街を歩いていると、インド人と思しき爺さんが片言の日本語で話しかけてきて一瞬自分が世界のどこにおり、いつの時間を生きているのか混乱する。夕食は、食堂New Zahir(地球の歩き方でも紹介されている)でマトンスープとピラウを頼んでみる。マトンスープは、ちょっと茶色く濁った白湯スープの中に羊足?(指と爪とふっくらとした足の裏がしっかりと残っており、なんとなく不気味)がごろりと入っており、コク味と臭みが絶妙なバランスを出している。生前この足で大地やうんこを踏みしめている姿と想像すると、ああお前も生きていたんだねえと感慨にふける一方で複雑な気分。

 翌日は国内線のプロペラ機に乗り込み約1時間でキリマンジャロに移動、半乾燥地帯の平野部を抜けると豊かな緑に覆われたキリマンジャロ山の丘陵地帯が見えて来た。今回はキリマンジャロを取り巻く丘陵地帯に点在する生産者コミュニティーを訪問する。ここでは豊かなキリマンジャロの雪解け水を用いた伝統的な灌漑システムが受け継がれており、村人の畑を潤している(近年の温暖化と異常気象によりこの灌漑システムが崩壊されつつあるが)。畑は高木、バナナ、コーヒー、芋、豆等が混在する混植農業が行われており、換金作物であるコーヒーと食料の自給を担うバナナなどが村人の生活を支えている。ATJが取り組むキリマンジャロのコーヒーはおいしいキリマンジャロの水と大地の恵みをいっぱいに受けて育っている。

伝統的灌漑システム(最近はキリマンジャロの雪が少なくなり水量が減った)

 英国のNGO、TWINのリチャードとタンザニア原住民協同組合連合会(KNCU)のスタッフとともにキリマンジャロコーヒーの生産者協同組合である Uru North Nijari Community(UNNC)を訪問。UNNCはKNCUに属するチャガ族の小規模生産者の協同組合でキリマンジャロ山麓の標高約1500mに位置する。組合員数は718名。ここでは、高価な薬剤を使用する必要が無く生産者にとって安全で、良い条件で販売することの出来る有機栽培コーヒーへの転換を進めている。根菜類、コーヒー、バナナ、シェードツリー等を組み合わせた伝統的な混植農法と総合ペスト対策管理 (IPM)手法を組み合わせて、現在約200名の組合員が有機栽培のグループ認証取得に取り組んでおり、現時点で131名が有機認証を取得し、生産者と環境にやさしくておいしいコーヒーを栽培している。

畑の中では有機鶏?が歩き回る
伝統的な混植を取り入れたコーヒー栽培
有機コーヒー生産者 ジョセフさん
乾燥後、二次加工場への出荷を待つ
(パーチメント)
陶器作りの女性グループ
縫製作業所

焼き物の釜


 同協同組合では51名の女性組合員が活動しており協同組合事務所では、女性グループによる陶器作りや服の縫製が行われていた。

 事務所脇の簡素なキオスクでこれらの製品や干し魚をはじめ、生活必需品が売られていた。

 

名物キリマンジャロ・ビール
窓からのぞくキリンがおちゃめ

 訪問後、協同組合会長のマサオ氏、元会長のタッシャー氏を交え協同組合の面々とキリマンジャロ・ビールで乾杯。スワヒリ語は日本語に近い発音が多いと誰かがいっていたような気がするが、会長のマサオ「正男」さん、前会長のタッシャー「達者」爺さんなど親近感を覚える。
 達者爺さんは1949年から50年以上協同組合活動を続けてきた。爺さんの口癖は「天国にはビールは無いからね、今のうちに呑んで楽しく過ごさないと…」。チャガの人々は皆お酒好き。キリマンジャロにはバナナを醗酵させて作った伝統的なバナナビールやおいしいビールがいっぱいあり、ビール好きにも最高の国。「セレンゲティ」「キリマンジャロ」などいかにもという名前のビールがある一方「Kicks」という強烈な高アルコールビールも人気。

タッシャー爺さんに
ATJの製品を届ける

 達者爺さんは今年で90歳を迎える。チャガの集落の人々は意外に長生き。キリマンジャロの雪解け水と豊かな植生の中で育ったバナナや野菜を毎日食べて、おいしいビールを飲んでいる為か?自然の恵みを上手に活用するチャガの暮らしを見ていると長生きも理解できる。
 宴会の最後に、参加者がそれぞれの思いを皆に告げる。いきなり振られて、「ATJのミッションはコーヒーという製品の向こう側にいる人々と日本の消費者を繋ぎその問題を共有することだよ…」とか何とか言ったような気がする。挨拶のトリは達者爺さん。
 「タンザニアの民衆は植民地時代以来ずっとコーヒーの栽培を続けてきたが、未だに人々は貧困の連鎖から抜け出していない。この負の連鎖から抜け出す為にはコーヒーを買う人々との連携が必要なんだよ…」
 90年間タンザニアとチャガ族の暮らしを見守る一方でコーヒーを通じて世界を見続けてきた爺さんの言葉に、ATJの使命を再確認すると共に持続的な協力関係の構築を誓った。

(事業部商品課 義村)

 
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