最新レポート  
2008年6月
東ティモール産地レポート

東ティモールでの現場担当者から現地の様子の報告が届きました。

  SLANKのイベント
 5月20日の独立記念日を前に、首都ディリでは多くのイベントが開催された。17日に社会派として知られるインドネシアの人気グループ「SLANK」が市中心部の野外スタジアムで大規模なコンサートを開催。無料で開放された会場内ではインドネシアの国旗と東ティモールの国旗が共に大きく振られ、若者達はインドネシア語の曲にあわせ合唱。会場に入りきれない人々は、壁によじ登り歌に酔いしれる。
 壁に書かれた「Viva Major Alfaredo (アルフレド少佐万歳)」の文字がかすんで見える。東ティモールは新たな時代を迎えようとしているのかもしれない。

注)アルフレド少佐:武装勢力を率い2月11日にラモス・ホルタ大統領を襲撃したが射殺された。同襲撃事件の実行グループで、エルメラの山間で潜伏を続けていたサルシナ元中尉率いる武装勢力メンバーら12人も4月29日、投降した。その後、非常事態宣言がとかれ、農民たちも安心してコーヒーの畑に入れるようになった。
  コーヒーチェリーの計量
 5月26日よりレキシ協同組合メンバーによるチェリーの買い付け開始。天秤を見る目は真剣。錘の位置が数ミリ違うだけでその日の売り上げ、ひいては一年間の現金収入に影響する。コーヒーという単一の商品作物への依存からの脱却は可能か。
現実とのはざまで
 BHN、Basic Human Needs(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)という言葉がある。衣食住や初等教育、医療、衛生など生活基盤を構成する要素を示す言葉だ。BHNがまだ十分ではない東ティモールの村々では、夜の気温が下がり始めるこの時期になると、多くの人が命を落としてしまう。とくに5歳以下乳幼児死亡率は、出生1000人に対して92人と日本の23倍もある。 私自身も現地にいる間に二度赤ちゃんの死に直面し、大きく気持ちを揺さぶられることがあった。アイレオ県にプランテーションを持つコーヒーコミュニティのひとつに、ATJが活動する拠点でもあるビダウ村がある。去年ATJ代表堀田が現地を訪問した際、ビダウのコミュニティに頼まれて痙攣している赤ちゃんをグレノにあるキューバ人医師の診療所に連れて行ったことがあるが、赤ちゃんは二日後の朝に亡くなった。社長とともに弔問すると、祭壇をカメラに収めるよう促された。家族の悲しみの場で写真は撮れないと断ったが、後に現地の真実を伝えることもATJの重要な使命と諭され、その言葉が強く心に残った。
 そして先週の金曜日、再びコミュニティの赤ちゃん(生後一ヶ月)の死に遭遇した。現地パートナースタッフのダニエルさんと二人で米一袋とろうそくを持って弔問した際、そこで去年と同じ光景を目の当たりにした。薄暗い部屋の中真新しいサッカーウェアに飾られて、生後間もない男の子が眠るように横たわり、母親の嗚咽が聞こえていた。
 今回、かなり自己葛藤したが、家族の了解を取り遺影として渡すことを約束した上で、あえて写真を撮り日本に伝えることとした。赤ちゃんの冥福を祈り、シャッターを押す。知らない間に涙が溢れていた。

 コーヒーという商品のサプライチェーン(フードシステム)の両端にいる人びとの暮らしの差はあまりにも大きい。生産者と消費者がコーヒーという商品を通じて繋がり、対等な立場で交流し、既存の貿易システムを変えてゆくことなんて奇麗ごとにしか過ぎないのではないかとさえ思えてくる。少しずつ時間をかけて取り組んでゆくしかない。



(事業部商品課 義村)

 
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